Digital Iwago Iwago's Report

岩合さんが世界各地で撮影した写真レポート。Mapの見たい場所をクリックしてね。




「ラクダ市」をあとに、僕は家畜と人々の生活を取材しに、クルマでナイル川流域に向かいました。大きな夕陽があたりをオレンジに染め、実に美しい。クルマを停め、しばらく夕陽に見とれていたい。と思っても、僕らを先導するガイド役のクルマが前を走り続け、停めるわけにもいかない。ちょっと残念でした。さて、いよいよ船で中洲の島々へ。ナイル川は穏やかな川であり、中洲には大小たくさんの島々が点在している。人口数千人が暮らす島もあります。地元の人々が生活のために使っている渡し船をチャーターして、島へ。渡し船といっても200人ほども乗れる大きさなんですが、乗るのはわずか数人。結局は、最初に交渉した金額より、高い船賃を要求されました。でも船の中では、ご馳走のおもてなし。ハトやウズラの料理と、モロヘイヤのスープ、トマトのソース、それらをアエイシ(丸く平たなパン)と一緒に食べるんですが、スパイシーな味つけで、なかなか美味でした。


渡し船が島に到着。女性たちがナイル川で洗濯をしている。向こうにイスラム寺院のモスクが見える。島の住居は日干しレンガでつくられており、朽ちても大地に還ります。だいたい一家三世代が一緒に暮らし、牛を飼い、ロバを飼い、羊を飼い、アヒルを飼っている。馬を所有している家は、お金持ちなんだとか。
陽が昇ると、人もこれらの家畜も一斉に畑仕事に繰り出します。一家の先頭をきって歩くのは、お父さんと男の子。牛もロバも一緒に歩く。そのあとをお母さんと女の子が歩く。そして家から数キロ離れた畑で一日の仕事を終えると、また人も家畜も一斉に家路につくのです。畦道にところどころで砂埃があがります。ロバは重い荷物を背負って、がんばって家路につきます。


動物に対して可愛いというのも何だけど、ロバは可愛い。子供のロバに近づくと、なぜワタシのことを見るのよ?というカオをして逃げていく。羊なんかだと表情が読めないんだけど、ロバは表情豊かだ。橋のたもとで写真を撮っていたとき、通りかかったロバがオシリをふって僕を川に突き落とそうとしたこともあった。ロバにしてみれば、そこのガイジン、そんなとこで何やってんだよ、ということだったんでしょうね。ロバは1才ぐらいから、15才ぐらいまで、人と一緒に働き続けます。あるとき、畑の用水路に水を流すため、水車を回すロバを見かけました。目隠しをされ、同じ円周上をただただグルグルと歩き続け、水車を回している。人も家畜も一緒になって作物を育て、一緒に生きている、ナイル川流域の暮らし。ここでは人間のあり方も、動物のあり方も、まるで一緒のように見えます。
(岩合光昭 談)