Digital Iwago Iwago's Report
岩合さんが世界各地で撮影した写真レポート。Mapの見たい場所をクリックしてね。
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8月中旬。 一周1kmほどの小さな島に降り立った。 ここは平坦な島なので、身を隠す場所がどこにもない。 「万一ホッキョクグマに襲われたら、一巻の終わりだな」 と冗談にもならない軽口に、緊張がはしる。 何もない島を、ファイヤーウィードが鮮やかに染めている。 実際に見ると花の色は、赤というよりうすい赤紫だ。 ファイヤーウィードの群生地の近くにテントを張り、 その回りに鉄線のフェンスをはりめぐらせる。 触れると1万ボルトの高圧電流が流れる仕掛けを施し、セーフティーゾーンを作った。 さっそくキャメディアを携え、高さ4mのやぐらの上から 双眼鏡で周囲の観察を開始した。 |
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脚立の上からは、水平線から岬の海岸線まで、ぐるりと360°見渡せる。 ホッキョクグマは、海を泳いでやって来るのだろうか。 まだ、その姿はどこにも見えない。 2時間ほど双眼鏡をのぞき続けて疲れを感じた僕は、 お茶でも飲もうとキッチン用のテントの方に向かった。 すると視界の端に白い影が! どこからともなく現れた巨大なオスのホッキョクグマが、 鉄線のフェンス越しに僕を観察していたのだ。 ホッキョクグマは、音も気配もなく、まさに忍び寄ってくる。 |
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僕たちの食事のにおいに誘われたのか、 ホッキョクグマが、フェンスに沿ってテントのまわりを徘徊している。 鼻だけが僕たちの様子を伺うように、ずっとこちらを向いている。 と、そのとき、ホッキョクグマの鼻先がフェンスに触れた。 バチッ!1万ボルトの高圧電流にさすがのホッキョクグマも・・・と思ったら、 「フン」という顔をしただけで何事もなかったように悠然としている。 まさか、1万ボルトでも平気なのか? 絶対に安全とは言えなくなった電流フェンスの中から、 僕は目の前に広がる、花が最も美しく咲き乱れるポイントに向かって、 「この花の中へ。この花の中へ」とホッキョクグマに向かって念じ続けた。 |
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「まさにこのシーンを狙っていたんだ」 密生するファイヤーウィードの中から顔を出した、ホッキョクグマをキャメディアで狙う。 まさかカメラを意識しているはずはないのだけれど、 次々といろんなポーズを決めてくれる。 僕は夢中になってシャッターを切った。 ファイヤーウィードの赤紫とホッキョクグマの白、コントラストが目にも鮮やかだ。 念願の写真をキャメディアにおさめ、真夏の無人島キャンプを終えた。 僕たちがヘリでチャーチルへ戻った、 翌々日からフバートポイント周辺は、飛行機が飛べないほどの嵐になった。 気まぐれな極北の空も、僕の味方をしてくれた。 |
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