撮影取材記:イタリア ミツバチ編 第1話・ 第2話

岩合さんが世界各地で撮影した動物たちの写真レポートです。国・地域別でご覧いただけます。

Italy ミツバチ編 第1話 初めての養蜂取材で、イタリアへ。

取材はシチリア島から始まった。
エニシダの黄色の花で、渓谷が真っ黄色に染まっている。
ウイキョウの花にミツバチが飛び交っている。
ここはイタリアのシチリア島。長靴の先っぽにある島だ。
5月16日から6月3日まで、僕は蜂蜜メーカーからの依頼で、
イタリアに養蜂の取材に訪れた。有名なパティシエも途中から一緒だ。
まずシチリア島カターニャで、レモンなど柑橘系のハチミツづくりの取材をし、
次に北部のピエモンテ、最後にトスカーナを廻るというスケジュールだ。
ライオンとかホッキョクグマとかを撮っている僕が、
ミツバチの撮影をするなんて意外かな?
このところ、花と動物をテーマにしている僕にとって、
生まれて初めての養蜂の取材は興味津々だ。

手がミットのように腫れてしまった。

養蜂家の方に案内され、巣箱が置いてあるオレンジ畑に出かけた。
巣箱の色が、赤、緑、黄、青とカラフルだ。こんなところもイタリアらしい。
ここで、ちょっと蜂蜜の勉強。
蜂蜜は含まれている花粉を調べることで、
その蜂蜜がどんな種類の蜜からできたものかわかるらしい。
アカシア、クリ、オレンジ、レモンなどなど、いろいろな種類の蜂蜜があるが、
一種類の蜜の割合が高いほど、純度の高い蜂蜜とされている。
ミツバチは、巣箱からおよそ3km圏を飛び回る。
花の様子を見極め、巣箱をどこに置くかで、品質が決まるのだという。
僕は頭からすっぽりとネットをかぶり、
白い手袋をはめるという重装備で「E-1」を手にした。
巣板には蜂蜜がぎっしりと貯えられている。
撮影をしていると、手がしびれたような感覚に襲われた。
気がつくと、ミツバチが手の甲を刺している。
払おうとすると、仲間もますます攻撃を浴びせてくる。
白い手袋には寄ってこないと聞いていたが、ちがった。
結局、7カ所も刺された。
養蜂家は「2ヶ月間ぐらい刺され続けたら、慣れるよ」
と笑いながら、巣箱を素手でさわっている。

Italy ミツバチ編 第2話 ミツバチの引っ越しを見た。

煙たなびくエトナ山へ。美しい眺めだ。

養蜂の撮影取材で、シチリア島カターニャを訪れた僕たちは、
せっかくだからとエトナ山の方まで足をのばすことにした。
エトナ山は活火山で煙がたなびいている。
中腹には、100年以上前の貴族の別荘の跡があった。
穴のあいた石の壁が残っており、
それを額縁に「E-1」を向けると、絵画のような写真が撮れた。
あたり一面、黄色い花で埋めつくされている。
エトナ山を背景にした町で、
僕はネコのモデル探しをすることにした。
蜂蜜メーカーから、ラベルにネコの写真を使いたいと依頼されているのだ。
可愛い子ネコがいたが、飼い主が放すと、ひとっとびに逃げていった。
カターニャに戻り、レストランに出かけた。
実は今回のイタリア取材で、僕はどうしても食べたいものがあった。
生ウニのパスタだ。以前食べたとき、実に旨く、楽しみにしていたのだが、
めざすパスタはそこにはなかった。残念。
仕方なくイカスミのパスタを注文したが、イカの身よりもソースが多かった。
食後には蜂蜜のケーキが置いてあるパティチエリ(イタリア語で洋菓子店)へと向かう。

南のシチリア島をあとに、北部のピエモンテにやって来た。
カルーゾの町にある養蜂家を取材する。
ここで僕は、ミツバチの引っ越し、というか巣立ちを見た。
ミツバチは巣に新しい女王バチが誕生すると、
女王バチは数百匹の働きバチを従えて巣を飛び立ち、
新しい巣をつくって群れを増やす習性がある。
これを「分蜂」というそうだが、それを目の当たりにした。
茶色の大きな塊が、木にはりついている。
新しい女王バチのもとに集まる、びっしりのミツバチだ。
養蜂家のアンドレアはネットもかぶらずに木に登ると、
平然と茶色の塊を枝ごと切り落とした。
ドサッというか、何とも表現のしようがない音がした。
下では、アンドレアのお母さんが巣箱を持って待ち構えていた。
ミツバチもこれぐらい大きな塊になると、実に重い。
蜂蜜を貯えた巣箱となると、
ミツバチだけの重さの2~3倍にもなり、100kgを超えるそうだ。

あれは、何だ?! 木にびっしりと茶色の塊。

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