撮影取材記

撮影取材記:パンタナール 第1話・第2話

岩合さんが世界各地で撮影した動物たちの写真レポートです。国・地域別でご覧いただけます。

Pantanal Iwago's Photography Reports

Episode-1

01 プロローグ いつか必ず訪れたいと願っていた、世界最大級の大湿原パンタナール。ついに、決行のときが来た!

僕の中に、"パンタナール"という場所がインプットされたのは、1986年にさかのぼる。アフリカ・セレンゲティ国立公園に1年半滞在して撮影した写真が『ナショナル ジオグラフィック』誌の表紙を飾ることになったとき、編集者に「次は何を撮るんだ?」と聞かれた。僕がオーストラリアと答えると、彼は「オーストラリアより、もっと興奮するところがあるよ。南米のパンタナールだ」と言うのだ。そのとき僕は、パンタナールを知らなかった。そこはジャガーが撮れるのかと尋ねると、「撮れるとも!」という返事。 それ以来、"パンタナール"という響きが僕の心を捉え続けたが、なかなか訪れる機会には巡りあえなかった。

パンタナールは南米大陸のほぼ中央に広がる、世界最大級の大湿原だ。ブラジルからボリビア、パラグアイにまたがり、その広さはおおよそ日本の本州に匹敵する。10月頃から半年間ほどは雨季で、川が氾濫して多くの土地がどっぷりと水に浸かってしまう。5月頃になると乾季を迎えて水が引き、ところどころ川や池に水を残す以外は、草原へと姿を変える。そして、この世界でも希有な大湿原は、多彩な野生動物の生息地としても世界屈指であり、ジャガーをはじめ、オオカワウソ、パラグアイカイマン、カピバラ、アメリカバク、オオアリクイなど、多種多様な動物たちがいる。

パンタナールの湿原

岩合さん

(左)パンタナールの湿原、(右)岩合さん

ある日、僕は地球儀を回しながら、2018年のオリンパス/WWFカレンダーのための撮影地をどこにしようかと考えていた。そのときふと、"パンタナール"という響きがよみがえった。何かの記事で、縦貫道が出来たことにより、奥地に生息するジャガーを2000年代に入って見られるようになった、という報告も目にしていた。よし、撮影地はパンタナールだ!いつか必ず撮影したいと願っていた地だ。雨季と乾季のどちらのシーズンも取材しよう。乾季が終わろうとする10月初めに第一回目の撮影をすることに決め、僕はパンタナールへと向かった。

Episode-2

初めてのパンタナールに興奮し、初心者のように撮りまくる。ガイドは、Mr.ジャガーだ。

パンタナールは、実に遠かった。成田空港からチューリッヒ、サンパウロと乗り継ぎ、やっとブラジルのクイアバに降り立った。ここまで丸2日かかった。ここからは車で、パンタナールの入口にあたるポコネという町に向かう。ポコネに着いたとき、ドライバーが物騒な話をする。彼の奥さんがその朝、ポコネにある銀行に行ったら、なんと銀行が消えていたと言うのだ。銀行強盗が警察官を拉致し、ダイナマイトで建物ごと爆破させたらしい。銀行強盗もスケールが違う。

黄色い蝶

アメリカヌマジカ

パラグアイカイマン

(左上)黄色い蝶、(右上)アメリカヌマジカ、(下)パラグアイカイマン

ポコネからは縦貫道を走って、宿泊地のポルト・ジョフレに向かう。ガイド兼ドライバーは、Mr.ジャガー。彼に案内されるとジャガーに遭遇する確率が高く、ジャガーの気持ちがわかる男と言われているのだ。縦貫道には朽ち果てそうな木製の橋が60カ所くらい掛かり、そこを通るときはノロノロ運転になる。車を走らせていると、急に目の前に地平線が広がった。「ああ、パンタナールに来たんだなぁ」と実感する景色だった。途中、道路の水たまりに無数の黄色い蝶が群がっていて、僕らは蝶のトンネルの中を走った。帰路には、同じ辺りで道をのびのびと横切るアナコンダと出会う。水辺を見ると、パラグアイカイマンと呼ばれるワニが群がっている。100匹はいるだろうか。僕が「ワニ!ワニ!」と興奮してカメラを向けると、Mr.ジャガーが「こんなとこで撮らなくていいのに」という顔で僕を見る。彼には、ちっとも珍しい光景ではないのだ。「あっ、アメリカヌマジカがいる」。このときはMr.ジャガーもすかさず自分のカメラを出した。彼がカメラを出すのは、珍しい動物に遭遇したときだ。
半日かかって、ポルト・ジョフレに到着した。ロッジに入ろうとすると、不意に羽ばたきの音が聞こえた。スミレコンゴウインコだった。深いブルーが何とも美しい、パンタナールのシンボルといわれる鳥だ。
パンタナール初日、僕はジャガーに会う前から大興奮。カメラ初心者のように撮りまくった。

スミレコンゴウインコ

使用機材

パンタナール取材時・使用機種

  • OLYMPUS OM-D E-M1
  • OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
  • OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
  • ZUIKO DIGITAL ED 300mm
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm