撮影取材記

撮影取材記:パンタナール 第3話・第4話

岩合さんが世界各地で撮影した動物たちの写真レポートです。国・地域別でご覧いただけます。

Episode-3

ついに、念願のジャガーを発見。600mm※レンズで見た彼は、なんて男前なんだ!

パンタナールを訪れた最大の目的は、ジャガーの撮影だ。夜が明けるのを待ちかねるように、僕は意気込んで撮影に出かけた。ガイド役は、誰よりもジャガーに詳しいというMr.ジャガーだ。幅50メートルもあろうかという川をボートで上ったり下ったりしながら、ジャガーが森の中から川岸に姿を現わすのをひたすら待つ。出会えるかはタイミング次第ということか。ジャガーよ、早く出て来てくれ。観光客のジャガーサファリツアーが始まる前に、ぜひとも見つけたい。何十隻という観光ボートが川に出てくると、たとえジャガーが現われたとしても、撮影が困難になる。
ジャガーはなかなか現われない。ボートでの上り下りを繰り返す間は、水辺にいるカピバラのファミリーを撮影する。見ていると、家族構成によってカピバラの動きが違う。小さい子がいるファミリーは特に敏感だ。Mr.ジャガーはカピバラの動きを先読みできるのか、撮影しやすい絶妙なポジションにボートを移動してくれる。

カピバラのファミリー

カピバラを撮影する岩合さん

(左)カピバラのファミリー、(右)カピバラを撮影する岩合さん

どこまで行っても同じように見える川辺をボートを走らせ、ひたすら探索する。ついにMr.ジャガーが、「あそこに、いるぞ!」。慌てて彼が指し示す方向に目をやると、暗い茂みの中に、ハッキリはしないが確かにいる。ボートからの発見には長年の観察眼が必要なのか、川岸を目を皿のようにして見つめ続けていると、点のように小さな存在のジャガーでも、それまで見ていた景色と違和感を感じるのだ。その違和感で見つけるとは、さすがにMr.ジャガーだ。Mr.ジャガーからは、「点のようなジャガーがわかるとは、イワゴーも目がいい」と誉められた。
「本当にジャガーがいるんだ!」僕は感動した。ジャガーの表情を撮影しようと、600㎜レンズをつけた。「なんて男前なんだ!」あまりのカッコよさに、さらに感動した。
パンタナールで初めてジャガーに出会った興奮とともに、ボートを降りて川岸を歩いた。パラグアイカイマンの赤ちゃんがいた。チョウがヒラヒラ舞って、赤ちゃんの頭に止まった。アナコンダもいる。アルマジロもいる。
※35㎜判換算

ジャガー

パラグアイカイマンの赤ちゃんとチョウ

アナコンダ

アルマジロ

(上)ジャガー、(左下)パラグアイカイマンの赤ちゃんとチョウ、(下真中)アナコンダ、(右下)アルマジロ

Episode-4

雨季に再び訪れたパンタナール。土地はすっかり水に浸かり、前回訪れた場所までは行きつけない。

パンタナールの風景

パンタナールの風景

初めて訪れたパンタナールにすっかり魅せられた僕は、いったん帰国し、2月末から3月中旬まで再び撮影取材に出かけた。10月から半年間ほどは雨季が続く。この時期の動物たちがどんな様子なのか、ぜひ知りたかったのだ。
パンタナールの様子は一変していた。川が氾濫して、あたり一面の土地が水浸しだ。ポコネから、前回宿泊したポルト・ジョフレへと車で向かうが、道路にも水が迫ってきて、とてもそこまでは行きつくことができない。半分ほど行ったあたりのロッジに宿泊し、撮影拠点とすることにした。

マザマジカ

カピバラ

カピバラ

カピバラ

(上段左)マザマジカ、(上段右/上下、下)カピバラ

毎日のように雨が降る。1時間ほど降っては止むが、前が見えないほど激しく降るときもある。森は、乾季よりも緑が濃く感じる。マザマジカが木陰で雨宿りをしている。耳からは水滴が垂れている。
雨季のカピバラは、食べ物である水草が多いからか、何だかゴキゲンな様子に見える。茂みから現れると、キュルキュルと声を発しながら、顔だけを出して水の中を移動する。リラックスしているような表情だ。草むらにいるカピバラの背中に鳥が止まる。カピバラが動くと虫が飛び、それをついばみに来たのだ。
水に浸かった草原には、さまざまな水鳥がいる。パンタナールの代表的な鳥であるズグロハゲコウは、真っ白な大きい翼に、真っ黒な頭、赤い首元のコントラストが印象的だ。目の周囲からくちばしまで青いのは、シロゴイサギ。ダイサギやトラフサギ、ササゴイなどもいる。長い足爪を使って水面に浮かぶ植物の上を歩くのは、ナンベイレンカク。デコイを思わせるアカハシリュウキュウガモやシロガオリュウキュウガモは、リンリンと鈴のような音色で鳴く。可憐な花が咲く草むらでは、色とりどりの鳥たちがさえずっている。
聞こえてくるのは、鳥の鳴き声や水音など自然の音だけ。乾季と比べて観光客が少ない雨季は、人の営みの音が気にならない。本当のパンタナールは、雨季かもしれないと思った。

ズグロハゲコウ

ナンベイレンカク

シロゴイサギ

ダイサギ

トラフサギ

ササゴイ

アカハシリュウキュウガモ

シロガオリュウキュウガモ

(左上)ズグロハゲコウ、(右上)ナンベイレンカク、(中段左から)シロゴイサギ、ダイサギ、トラフサギ
(下段左から)ササゴイ、アカハシリュウキュウガモ、シロガオリュウキュウガモ

使用機材

パンタナール取材時・使用機種

  • OLYMPUS OM-D E-M1
  • OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
  • OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
  • ZUIKO DIGITAL ED 300mm
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm