撮影取材記:タンザニア 第1話・第2話

岩合さんが世界各地で撮影した動物たちの写真レポートです。国・地域別でご覧いただけます。

タンザニア・ンゴロンゴロ

タンザニア MAP

第1話 最新ミラーレス一眼が、僕をンゴロンゴロへと向かわせた。

2013年7月~8月にかけ、僕はアフリカ、タンザニアの北部にある保全地域ンゴロンゴロに撮影取材に出かけることにした。ンゴロンゴロはマサイの言葉で「大きな穴」という意味なのだが、その昔、火山の大噴火によってできた巨大なクレーターに、たくさんの野生動物たちが生息している。マサイの人たちも、牧畜を営みながら暮らしている。

岩合さん
岩合さん

実は僕は1982年~83年にかけ、二度にわたりンゴロンゴロに長期滞在したことがあるのだが、オリンパスから発売されたミラーレス一眼カメラOLYMPUS OM-D E-M1を手にしたとき、いま再び、ンゴロンゴロの撮影に臨みたいという思いに強くかられた。というのは、このミラーレスは機動性の良さはもちろんなのだが、最初に動物を撮影してみたとき、驚くほどシャープに撮れることに感動した。動物の眼がどこに向いているかも捉えることができる。これなら、その動物が感じていることまで撮れるような気がし、そのためには、できるだけ動物に近づきたいと思った。すぐ思い浮かんだのが、ンゴロンゴロだ。そこは、ライオン、アフリカゾウ、アフリカスイギュウ、ヌー、そして絶滅が危惧されているクロサイなど約25,000頭ともいわれる大型ほ乳動物が暮らし、動物の密集率では世界に類をみないと言われている。

マサイの人たち
マサイの人たち

そんなわけで、僕は新しいミラーレス一眼を手に、20年ぶりにンゴロンゴロを訪れることにした。成田空港を発ち、アムステルダム空港を経てキリマンジャロ空港に降り立ち、アリューシャという町で一泊。そして翌朝、車でンゴロンゴロへと向かった。以前は半日がかりの道のりだったが、いまでは立派な道路ができていて、途中ちょっとデコボコもあったが、3時間ほどで到着した。さあ、いよいよンゴロンゴロの撮影取材が始まる。

第2話 20年ぶりに訪れた、ンゴロンゴロ。この巨大なクレーターに、多種多様な野生動物たちが生きているのだ。

ンゴロンゴロ・クレーターは東西19㎞、南北16㎞、深さ600mといわれる、世界でも大規模なクレーターだ。その周囲を、標高2,000mを超える外輪山がぐるりと取り囲んでいる。サファリ観光に訪れた人の宿泊施設は、この外輪山にあり(もちろん僕の泊まるところも)、クレーターには東と北の2カ所のゲートからしか降りることができない。
初日、僕はまず外輪山からクレーターを見下ろしてみた。20年ぶりに見る光景だ。7月は乾季にあたるため、クレーター内はほとんど茶色だ。おまけに土ぼこりで、景色がボーっとしている。乾季といっても不思議なことに、ンゴロンゴロは水に恵まれている。外輪山のおかげだという。インド洋から湿った空気が吹きつけられ、それが外輪山にぶつかって上昇。上空を覆う厚い雲となって、大量の雨を降らせ、クレーター内に流れ込む。そのため周囲のサバンナが干上がってしまうような乾季も、ここは水が涸れ果てることがない。だから一年中いつの季節も、たくさんの野生動物たちが集っている。

外輪山から見たンゴロンゴロ

マサイの人たち

マサイの人たち
外輪山から見たンゴロンゴロ(上)、マサイの人たち(左右)

僕は、太古もこうだったに違いない、という思いで、ジオラマのようなクレーターを眺めた。遠目に、赤い色が見える。赤い布を巻きつけたマサイの人たちだ。マサイの人たちは外輪山に暮らしているのだが、牧羊犬を連れ、家畜である牛やヤギに水を飲ませに、クレーター内に降りてくる。家畜の動きはどこかバラバラと不揃いで、野生動物とは違うことが見てとれる。ここにはたくさんの野生動物がいるとはいえ、茶色の世界で茶色の動物たちは見つけにくい。はたして本当に多くの野生動物たちと出会えるのか、ちょっと心配になってきた。
クレーターに降り、ドライバーとともに四輪駆動で走っていく。以前はオフロードできたのだが、いまは走ることができる道が厳しく制限され、道を外れることができない。動物の方から近寄って来てくれることを願うばかりだ。しかし心配には及ばなかった。しばらく走ると、僕らの行く手にサバンナシマウマが見えた。

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