撮影取材記:日本 ハルウララ編

岩合さんが世界各地で撮影した動物たちの写真レポートです。国・地域別でご覧いただけます。

讃岐うどん発祥の地、香川県でネコの撮影を終えた僕は、四国横断自動車道を南に向かった。
目的地は、坂本龍馬で有名な高知県。
そこに龍馬を凌ぐほどの人気と知名度を誇る、
メスのサラブレッドがいるという。
その名は「ハルウララ号」
負けても負けても走り続ける姿が、 
見る者に勇気を与えてくれると全国で話題になった、今をときめくアイドルホースだ。
しかも今回特別に日本最高のジョッキー武豊さんがタズナをとるという。
史上最速・最年少で2200勝を達成した天才と、
デビュー以来105連敗「絶対当たらない」と
馬券が交通安全のお守りになってしまうほどの史上最弱ホース。
まさに夢のコンビ。その姿をE-1で撮影してみたい。

   
     
スタートいきなり出遅れ。結果は・・・

3月22日月曜日。競馬場に足を踏み入れるのも初めてなら、
レース中のサラブレッドを撮影するのも初体験。
どんな写真が撮れるのだろうと、期待に胸をときめかせながら高知競馬場の門をくぐって驚いた。
なんと90社以上のマスコミが殺到し、スタンドも1万人以上の超満員。
カメラをセットする場所も抽選で決めなくてはならないほどの大騒ぎだった。
僕は出走ゲートのそばでE-1を構え、スタートの瞬間を狙うことにした。
レンズは標準ズームの200mm。
ゼッケン5番、黄色のヘルメットがハルウララと武豊騎手だ。
天候は朝からあいにくの雨模様。
ところがハルウララが出走する最終レース直前、にわかに風が吹き始め、雲間から太陽の光が差し込んできた。
自然もドラマチックな演出をしてくれる。
「ハルウララ、初勝利の予感!」
しかしスタートで出遅れたハルウララは、雨にぬかるんだコースを、後方から泥まみれになって走っている。
結果は全国ニュースでも報道された通り「ブービー賞」これで通算106連敗。
全国民の期待むなしく(?)初勝利はお預けとなった。

   
     
戦い終えたハルウララと待望の対面。

翌日、厩舎を訪ねると、左目に眼帯をしたハルウララがいた。
レース中にはねた石が目に当たり、負傷したとのこと。
「発熱もしていて、食事もとらない」と厩務員さんも 心配そう。
ハルウララは、サラブレッドの中でも特にデリケートで、撮影にも細心の注意が必要だ。
一週間滞在し、毎日厩舎に通い詰めても、ほんのわずかな時間しか撮影は許可されなかった。


ハルウララは今年8歳。
競走馬としては、もう高齢の部類にはいるのだそうだが、
間近で見ると、特に目がかわいい。
お別れするのがさびしくなるほど、ほんとうにチャーミングな女性だった。
「次こそがんばれよ。」
僕はハルウララに声をかけて、高知競馬場を後にした。

   

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